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湯沢の新築3000万円物件がほぼ0円

かつてのリゾートマンションが無人同然の状態に陥っている

バブル時代は、東京の郊外型マンションと同水準の価格だった新潟県湯沢町のリゾートマンション。世の中は、平成大バブルの絶頂に向かって盛り上がっていた。また、スキーブームにも沸いていた。東京に住む多くの若者は、冬になると2度か3度はスキーに行くことが当たり前だった。

当時の東京の郊外型マンションとほとんど同じ水準だった。その購入費用と維持費用の総額は、同じリゾート地のホテルを利用した2泊3日のスキー旅行を毎年5回、30年続けた場合の費用よりも高額だったのである。しかし、時はバブルだった。そういった商品に説明できない価格がついていても、それなりに売れていた。そのうち、都心にあるようなタワー型のリゾートマンションまでが湯沢エリアに次々と登場した。湯沢エリアで、リゾートマンションブームが巻き起こったのだ。最終的に、湯沢町には約1万5000戸分のリゾートマンションが建設されたという。

リゾートマンションの末路

現状はどうなっているのか。そういったリゾートマンションの資産価値は、ほぼゼロと考えていい。10万円で売り出されている物件も多数あるが、成約事例が多いとは思えない。かつては3000万円から5000万円以上で販売されたリゾートマンションが、今やその価値がゼロ円だと見做されている。

今や高齢者のためのデイサービス施設

多少老朽化したとはいえ、設備が立派である。とくに、温泉大浴場は一流の温泉旅館並みと思える物件も多い。タワータイプのリゾートマンションの中には、豪華絢爛な展望大浴場もある。
数十万円の購入費と月々3万〜4万円程度の維持費用で、温泉大浴場のついたマンションに住めるのである。ある意味で、高齢者向きと言えなくはない。
かつて、リゾートマンションとして時代の先をゆく華やいだ存在だったのが、今や高齢者たちが寄り添って時間を過ごすデイサービス施設のようになってしまっているのだ。

一説によれば、湯沢町にあるリゾートマンションの6割が、1年に1日も利用されていないとか。こういう数字には、どこまで信憑性があるのかわからない。ただ、湯沢町の各エリアにあるリゾートマンションを見て回ると、オフシーズンに利用されている住戸は全体の1割にも満たないであろうと想像できる。

こういったリゾートマンションの所有者の多くが、「できれば手放したい」と考えているはずだ。運よく買い手が見つかる場合もあるのだろうが、大半の人が絶望感を味わいながら、管理費や修繕積立金、そして固定資産税などを払っていると想像できる。その費用は30m2程度の狭い住戸でも、年間30万円前後はかかる。駅に近くて広い住戸だと、年間50万円以上になるはずだ。

年に1日も使わないのに、そういった費用は払い続けなければならない。

有料粗大ゴミ同然の存在

最近、「なんとか手放せないものか」と考えている所有者の弱みに付け込んだビジネスが登場した。その会社のビジネスモデルは、「3年分の所有経費を払ってくれたら、区分所有権をもらってあげますよ」というもの。現所有者から3年分の管理費や修繕積立金、固定資産税などの総額相当を払わせることで、所有権を自社関連の法人に移転させるのだ。所有者からすれば、3年分の経費を払うことで、実質的に4年目以降の支払いから完全に解放される。「だったら、3年分払うから引き取ってください」ということになるのだ。とうとう、リゾートマンションは有料粗大ゴミ同然の存在になり下がった。
しかし、このビジネスには多分に無理があるように思える。その会社は、引き取って自社関連法人の所有にしたマンションをどうするのか。たぶん、転売はできない。元の所有者が何年もかけて売れなかった物件だ。こういった取引でその所有者になってしまったら、管理費や修繕積立金、湯沢町への固定資産税を払わなければいけないではないか。

しかし、それで、管理費や修繕積立金、固定資産税を払ってもらえない管理組合や湯沢町が困ることになる。結局、管理組合が競売にかけるか、湯沢町が公売に付すしか手はなくなる。しかし、そこで落としてくれる善良な一般人がそうやすやすと現れるとも思えない。このような悲惨な状態であり、
管理費滞納などで競売にかけた場合、管理組合で落札するケースが多くなった。1万円で競売に出された物件を、20万円で落札する場合もあるという。普通の手段では住宅を購入することも賃貸することもできない反社会的な人々などが競落するのを防ぐためである。また、湯沢町では、マンションの理事長の連絡会議のような組織があり、行政や警察と協議する場が設けられたりしている。かつて、湯沢町の管理組合の連帯組織は、宅建業の所管官庁である新潟県と粘り強い交渉を行ったという。

湯沢町の秩序は保たれるのか

バブル期とはいえ、リゾートマンションを購入した人はそれなりの富裕層である。その多くは親から資産を受け継いで富裕層になったのではなく、自らの才覚と能力でリゾートマンションを購入できる富を築いたのだと推測する。そんな彼らが、管理組合を運営する第1世代になっている。そういうタイプの人々というのは、仕事もできるし頭脳も優秀だ。彼らが管理組合を運営しているから、湯沢町のリゾートマンションではいまだに秩序が保たれているのだと考えている。

しかし、バブルの絶頂から約30年が経過した。40歳で購入した人は今、70歳になっているはずだ。あと10年で80歳。第1世代が築いた管理組合運営のノウハウは、第2世代以降に引き継がれるだろうか。あるいは、第2世代と呼ばれる人々は存在するのか。
築30年以上になる老朽マンションも多くなってきた。同時に、区分所有者も高齢化している。管理費や修繕積立金の滞納は増えこそすれ減るとは思えない。